今回「鑑定」を行う艇はヤマハボート大阪店にある平成5年式のMX-40。
年式としては19年経過しているが、陸上保管でしかもフライングブリッジのシートなどの張替えもしており、素人目で見ると「とても程度の良い艇」の印象である。
この艇が鑑定システムで定められた140項目もの細かいチェックを経て、晴れて「鑑定艇」となる訳であるが、各項目毎に「どこを・どこまで・どんな風に」チェックしてくれるのか、鑑定作業に当たったヤマハサービスセンター関空マリーナの野中さんに密着して取材させていただいた。
まずは、船体外観(船底)のチェックであるが、ハル全体の目視チェックだけでなく、特に安全面で影響度の高い事故歴の有無などは、目視だけでなくハンマーで叩いた音の変化などでも聞き分ける。
また、船体貫通部材(スルーハル)については特に慎重にミリ単位の隙間・ガタツキも見逃さないプロの目が光っている。更に、金属部分などで塗装されている所は、金属の腐食状態などは外観からだけでは分からないため、塗装面を剥がして金属面を細かくチェックする。
続いてデッキ回りのチェックであるが、ウィンドなどは素人では分からない水漏れ後などを目視で細かくチェックした後、ガラス面を押さえてガタツキやパッキンの緩みなどをチェックしていく。ワイパーブレード、ハッチパッキン、ハンドレール・クリートは、ガタツキやボルトの緩み、ゴム・パッキンの傷み・破損状況など、目視だけではなく、実際に触ることでより細かいチェックを行う。
デッキ面でも特にハッチ口周りなどの力が加わる部分を細かくチェックしていくと数箇所にほんの僅かなゲルコートクラックを発見。
僅かな不具合も絶対に見逃さないプロの目と、細かく規定された「鑑定チェックリスト」により、確実にそれぞれのチェック項目が実行されていく様子には感心するばかりである。
ヤマハ認定のサービス資格を持ったプロのサービスマンがサーバー上のデータに専用iPadで点数評価を入れていく仕組みとなっており、正確かつ抜けのないチェックができている様子がうかがわれる。
キャビンの上部ハッチや燃料タンクのキャップなど、開け閉めの頻繁に行われる箇所はパッキンなどの傷みも大きいため、特に入念なチェックを行う。
ガンネル周囲の保護部材は着岸時の衝撃を受ける部分でもあるため、保護部材自身の損傷だけでなく、保護部材のベース部分の損傷具合などからハルそのものの損傷度合いを判断するなど、損傷部位の目視チェックだけでなくその部位の損傷度合いによって、損傷の要因・損傷時の衝撃の大きさ、それによるその他の部分のチェック場所・チェック方法などを判断するのはチェックリストには書かれていない部分であり、プロのサービスマンならではの「勘」も働かせたチェックが出来ている。
アウトリガー・航海計器など、追加で艤装されている機器・艤装品なども作動チェックを丹念に行っていく。
燃料タンクは、配管からの燃料漏れ、ホースの損傷具合、ホースの接合状態などを細かくチェックし、インシュロックの緩みなどはその場で増し締めを行うなど、不具合箇所の修正も行う。
水フィルターなども分解し、汚れのひどいものは清掃を行うなど、単にチェックだけでなく、簡単な清掃・メンテナンスまでは含まれているのはお客様にとって大変嬉しい。
キャビン内の鑑定も大変厳しいチェックが行われる。
プロのサービスマンでなければ絶対に見落とす・判断できない水漏れ後や小さな傷まで一つ一つ丁寧に確認していく。
キャビン床下の船底内部チェック等では目視だけでなく、叩いた時の異音なども見逃さずにチェックされる。
操舵スタンドの裏板を外してのチェックでは、油圧ステアリングの油漏れや配線関係の損傷や電圧・電流のチェックなども行われていた。
このような機器を使ってのチェックも鑑定ならではの安心感である。
エンジンルーム内のチェックは更に専門性も高い確認内容で進められている。
エンジンルーム全体のビルジの状態から水・オイル漏れの有無・漏れ箇所の推定から始まり、エンジンの裏側に回ってのチェックなど、配管・配線・部品など、細かいチェックが進められる。
バッテリーの液量確認、ターミナルの損傷状態、ターミナル・ケーブルの締め付け状態・損傷状態など、経路に沿って点検していく。更にクーラント溶液の濃度チェックなども行ってくれるのには驚きである。
ラバーマウントのゴムの損傷状態やボルト緩みチェックのための塗装確認など、鑑定チェックリストに基づき点検項目を黙々とチェックする姿にまさに「プロ」の姿を感じる。
「ボートは20年以上も使用される息の長い商品です。ヤマハでは長くボートを使ってもらうために、メーカー推奨の定期点検項目の設定や整備点検制度を進めており、今回の鑑定においても、その精神・考え方を元に策定しました。」「中古艇業界では“現状渡し”がまだまだ見受けられますが、それではご購入いただいたお客様は大きな賭けをするようなもので、車業界の様な“整備渡し”を標準にしていかないと、お客様の中古艇に対する不安は払拭できないと考えます。」「今回の鑑定制度の最大のポイントは様々な点検項目を全て5段階の数値評価とし、プロのサービスマンであれば誰が行っても同じ点数になるようにすることでした。その為に一つづつのチェック項目の表現を分かりやすく文章で規定し、サービス資格を保有しているサービスマンではありますが、鑑定に携わる方は更に研修まで受けていただく、という形としました。」
「将来的には中古艇も車業界のようなディーラー認定制度になって行くように更に努力していきます。」
「鑑定をする、というのは非常に責任のある業務だと思っています。というのも、我々が鑑定したものが“鑑定書”という形で誰もが見れる証書になるのですから責任重大です。」「お客様はその鑑定書を見て、どこがどんな風になっているのか、をお知りいただくわけですから、間違った判断・見立てをする訳にはいきません。」
「特に、その艇をご購入いただいたお客様にとって、ご購入後に不具合が見つかって危険な箇所(オーバーヒート・エンストなどのエンジン関係やスルーハル部分からの浸水など)やお金が掛かる部分(エンジンの吹き上がり不良など)の確認は特に入念に行うようにしています。」「また、お客様自身が目視で確認するだけでは判別しにくいところなども細かくチェックしています。チェックリストが細かく設定されていますので、チェック漏れなども無く、また、5段階の数値化になっていますので感覚ではなく正確に評価ができるという点が良いですね・・」「鑑定を行うのは大変な作業ではありますが、全てお客様の安心のためなので気が抜けない重要な業務だと考えています。今後更に鑑定艇が増やせるように頑張ります。」
「鑑定制度はお客様にとって中古艇を選ぶ際に抱かれる様々な不安を取り除く事ができる非常に素晴らしい仕組みですね・・。」
「お客様は中古艇の状態を正確に評価する知識や技術はお持ちでないので、ご自身で確認しても後で不具合が見つかったりする事があり、どうしても中古艇に対して不安が付きまといますが、従来の中古艇の評価は感覚的な要素が強かったのですが、それを全て客観的な評価でしかも数値化する、という評価制度は非常に分かりやすく、お客様に自信をもって商談できます。」「ここはこんな状態ですのでここまで修理した方が良いですよ。」「お客様の使用目的であれば、こことここを部品交換しておきましょうか。など、お客様の要望・期待に対し、明確な整備レベルをご提示できますし、それによって、お客様も安心してそのボートをお乗りいただける形になりますね・・」
※鑑定書画像はイメージです。
鑑定中古艇とは、中古艇鑑定資格を有する販売店により「鑑定」された艇です。
販売店のサービスマンは、中古艇協会の「評価士」資格並びに、ヤマハボート・エンジン・船外機2級整備士資格を保有しています。
対象艇はヤマハ製造艇もしくはヤマハ取扱い輸入艇で、50F未満のJCI登録のプレジャーボートです。
現在の艇の状態(良い・普通・悪い)を最大140の項目でチェックし、艇の価値を公平な目で鑑定します。(保証はありません)
ご購入されたお客様には販売店による「鑑定書」の発行が可能です。